■前環境のおさらい

前環境までのスタンダードは近年稀に見る多様なアーキタイプが群雄割拠するメタゲームでした。ここではそれらをそのアーキタイプのキーカード毎に分け分類し、前環境のおさらいとします。

■高速《炎樹族の使者》デッキ
環境を定義する最速のデッキタイプ、そのキーカードがギルド門侵犯に収録された《炎樹族の使者》です。戦場に出たときにマナを生み出すという能力によって、序盤の圧倒的な展開力を実現しています。このカードを軸にしたデッキには主に以下のようなものが存在します。

・赤単
・グルールアグロ
・ナヤブリッツ

■中速《スラーグ牙》コントロール
環境最強のアドバンテージクリーチャーであるM13収録の《スラーグ牙》。
このカードを軸にしたデッキの特徴は強みである中盤以降に素早く到達するためのマナ加速(マナクリーチャーや《遥か見》)を採用していること。
また《修復の天使》や《掘葬の儀式》による《スラーグ牙》の能力の使いまわし、
《スラーグ牙》の場持ちの良さを生かした《原初の狩人、ガラク》や《主席議長ゼガーナ》の採用が挙げられます。このカードを採用したアーキタイプには以下のようなものがあります。

・ドランリアニメイト
・ジャンドコントロール
・ドムリナヤ
・バントコントロール

■重《スフィンクスの啓示》コントロール
環境最強のアドバンテージ呪文である《スフィンクスの啓示》によって終盤の優位を確立し、相手をコントロールしきって勝つことを目指すアーキタイプです。
構成は豊富な除去呪文、カウンターを採用し、序盤から中盤を乗り切る構成になっています。このようなアーキタイプには以下のようなものがあります。

・トリココントロール
・エスパーコントロール
・門コントロール

■《カルテルの貴種》シナジーデッキ
優秀な生贄エンジンである《カルテルの貴種》を軸に、生贄とシナジーがあるカードを搭載し、相互作用によって優位を確立、若しくは即死級のコンボを成立させるアーキタイプです。このようなアーキタイプには以下のようなものがあります。

・ドランアリストクラッツ
・赤白黒アリストクラッツ
・人間リアニメイト

■高速《聖トラフトの霊》一点突破デッキ
《聖トラフトの霊》の除去耐性と圧倒的な打点を生かし、高速で相手に大ダメージを与え素早く勝利するアーキタイプです。このようなアーキタイプには以下のようなものがあります。

・バントオーラ
・トリコサイクロプス

このように前環境では大きく分けて、《炎樹族の使者》《スラーグ牙》《スフィンクスの啓示》《カルテルの使者》《聖トラフトの霊》といったパワーカード達が各アーキタイプの軸となり、メタゲームを展開していました。

■M14リリースによる各アーキタイプの強化

M14に収録された強力な新規カードによって、前環境の各アーキタイプが強化されました。前述で分類した軸となるカードを中心に、M14のどのカードがどのようにそのアーキタイプを強化したのかについて先週末行われたSCGの結果を元に分析していきます。

■《炎樹族の使者》デッキ
【赤単アグロ】

creatures (31)

3 《灰の盲信者/Ash Zealot》
4 《炎樹族の使者/Burning-Tree Emissary》
4 《チャンドラのフェニックス/Chandra’s Phoenix》
4 《火拳の打撃者/Firefist Striker》
4 《地獄乗り/Hellrider》
4 《稲妻のやっかいもの/Lightning Mauler》
4 《ラクドスの哄笑者/Rakdos Cackler》
4 《流城の貴族/Stromkirk Noble》
lands (22)

18 《山/Mountain》
4 《変わり谷/Mutavault》
spells (7)

4 《灼熱の槍/Searing Spear》
3 《火柱/Pillar of Flame》
sideboard

3 《燃え立つ大地/Burning Earth》
4 《火山の力/Volcanic Strength》
3 《頭蓋割り/Skullcrack》
3 《ミジウムの迫撃砲/Mizzium Mortars》
2 《裏切りの血/Traitorous Blood》


M14からは《チャンドラのフェニックス》《変わり谷》《燃え立つ大地》が追加されています。何れもコントロールのクリーチャー除去呪文に強いクロックであり、より対処の難しいビートダウンへと進化したことが分かります。特に《燃え立つ大地》はこのアーキタイプと相性がよく、今後の定番サイドボードとなりそうです。影響の大きい中速以降のコントロールは今後対処が必須となるでしょう。

■《スラーグ牙》デッキ
【緑白アグロ】
creatures (26)

3 《静穏の天使/Angel of Serenity》
4 《東屋のエルフ/Arbor Elf》
3 《テューンの大天使/Archangel of Thune》
4 《アヴァシンの巡礼者/Avacyn’s Pilgrim》
4 《漁る軟泥/Scavenging Ooze》
4 《スラーグ牙/Thragtusk》
4 《復活の声/Voice of Resurgence》
planeswalkers (2)

2 《獣の統率者、ガラク/Garruk, Caller of Beasts》
lands (24)

9 《森/Forest》
5 《平地/Plains》
2 《ガヴォニーの居住区/Gavony Township》
4 《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
4 《寺院の庭/Temple Garden》
spells (8)

4 《ワームの到来/Advent of the Wurm》
4 《セレズニアの魔除け/Selesnya Charm》
sideboard
3 《ケンタウルスの癒し手/Centaur Healer》
2 《忘却の輪/Oblivion Ring》
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
3 《天界のほとばしり/Celestial Flare》
3 《ギルドとの縁切り/Renounce the Guilds》
2 《終末/Terminus》


M14からは《テューンの大天使》《漁る軟泥》《獣の統率者、ガラク》《天界のほとばしり》が加わっています。M14の追加によって、《カルテルの貴種》デッキのように《スラーグ牙》のライフゲインにシナジーが生まれています。

■《スフィンクスの啓示》デッキ
【トリココントロール】
creatures (11)

4 《ボーラスの占い師/Augur of Bolas》
4 《修復の天使/Restoration Angel》
3 《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
lands (26)

1 《島/Island》
3 《断崖の避難所/Clifftop Retreat》
2 《浸食する荒原/Encroaching Wastes》
4 《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
1 《ムーアランドの憑依地/Moorland Haunt》
3 《聖なる鋳造所/Sacred Foundry》
4 《蒸気孔/Steam Vents》
4 《硫黄の滝/Sulfur Falls》
spells (24)

4 《アゾリウスの魔除け/Azorius Charm》
2 《対抗変転/Counterflux》
1 《巻き直し/Rewind》
3 《スフィンクスの啓示/Sphinx’s Revelation》
2 《中略/Syncopate》
4 《熟慮/Think Twice》
1 《変化/Turn》
2 《戦導者のらせん/Warleader’s Helix》
3 《火柱/Pillar of Flame》
2 《至高の評決/Supreme Verdict》
sideboard

2 《漸増爆弾/Ratchet Bomb》
2 《イゼットの静電術師/Izzet Staticaster》
3 《雷口のヘルカイト/Thundermaw Hellkite》
2 《忘却の輪/Oblivion Ring》
3 《払拭/Dispel》
2 《ギルドとの縁切り/Renounce the Guilds》
1 《変化/Turn》


M14からは《侵食する荒原》《漸増爆弾》が投入されています。
過去このタイプのデッキで定番であった《地盤の際》の後継である《侵食する荒原》が、並み居る強力な無色土地の中で定番となることが出来るか注目です。
《漸増爆弾》はトークンに強く、一枚で多様なカードに対応出来る点でコントロールのサイドボードにはぴったりのカードであり、今後もよく見かけるカードになりそうです。

■《カルテルの貴種》デッキ
【白黒人間】
creatures (21)

4 《血の芸術家/Blood Artist》
1 《血の座の吸血鬼/Bloodthrone Vampire》
4 《カルテルの貴種/Cartel Aristocrat》
4 《教区の勇者/Champion of the Parish》
4 《宿命の旅人/Doomed Traveler》
4 《ザスリッドの屍術師/Xathrid Necromancer》
planeswalkers (3)

3 《イニストラードの君主、ソリン/Sorin, Lord of Innistrad》
lands (23)

7 《平地/Plains》
5 《沼/Swamp》
4 《神無き祭殿/Godless Shrine》
4 《孤立した礼拝堂/Isolated Chapel》
2 《変わり谷/Mutavault》
1 《オルゾフのギルド門/Orzhov Guildgate》
spells (13)

1 《オルゾフの魔除け/Orzhov Charm》
4 《悲劇的な過ち/Tragic Slip》
4 《町民の結集/Gather the Townsfolk》
4 《未練ある魂/Lingering Souls》
sideboard

1 《真髄の針/Pithing Needle》
2 《生命散らしのゾンビ/Lifebane Zombie》
2 《罪の収集者/Sin Collector》
2 《無形の美徳/Intangible Virtue》
1 《精霊への挑戦/Brave the Elements》
2 《破滅の刃/Doom Blade》

2 《利得/Profit》
1 《幽霊議員オブゼダート/Obzedat, Ghost Council》
2 《脳食願望/Appetite for Brains》


M14からは《ザスリッドの屍術師》《変わり谷》《生命散らしのゾンビ》《精霊への挑戦》が採用されています。《ザスリッドの屍術師》は軸となる《カルテルの貴種》と非常に相性がよく、今後も共によく見られそうです。《変わり谷》はあらゆる部族とシナジーするため、このデッキのように色拘束が弱い部族デッキでは必須となりそうです。注目の色対策レアサイクルの一角である《生命散らしのゾンビ》は、特に《スラーグ牙》を中心としたアーキタイプに有効であり、相性差を覆す優秀なサイドボードです。《精霊への挑戦》は白系のビートダウンにおいてエンドカードにもなりうる極めて優秀な呪文であり、そうしたアーキタイプでは常に考慮の対象となるカードです。

■《聖トラフトの霊》デッキ
【バントオーラ】
creatures (18)

3 《アヴァシンの巡礼者/Avacyn’s Pilgrim》
3 《剣術の名手/Fencing Ace》
4 《林間隠れの斥候/Gladecover Scout》
4 《不可視の忍び寄り/Invisible Stalker》
4 《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》
lands (21)

1 《森/Forest》
4 《繁殖池/Breeding Pool》
2 《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4 《内陸の湾港/Hinterland Harbor》
2 《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
4 《寺院の庭/Temple Garden》
spells (21)

4 《好奇心/Curiosity》
4 《天上の鎧/Ethereal Armor》
4 《怨恨/Rancor》
3 《幽体の飛行/Spectral Flight》
4 《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》
2 《シミックの魔除け/Simic Charm》
sideboard

2 《ロクソドンの強打者/Loxodon Smiter》
3 《近野の巡礼者/Nearheath Pilgrim》
2 《安らかなる眠り/Rest in Peace》
3 《濃霧/Fog》
2 《繕いの接触/Mending Touch》
1 《群れの統率者アジャニ/Ajani, Caller of the Pride》
2 《魂の洞窟/Cavern of Souls》

【バントオーラ】
creatures (20)

4 《アヴァシンの巡礼者/Avacyn’s Pilgrim》
4 《鬼斬の聖騎士/Fiendslayer Paladin》
4 《不可視の忍び寄り/Invisible Stalker》
4 《絡み根の霊/Strangleroot Geist》
4 《聖トラフトの霊/Geist of Saint Traft》
lands (21)

1 《森/Forest》
4 《繁殖池/Breeding Pool》
2 《氷河の城砦/Glacial Fortress》
4 《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
3 《内陸の湾港/Hinterland Harbor》
3 《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove》
4 《寺院の庭/Temple Garden》
spells (19)

4 《天上の鎧/Ethereal Armor》
4 《怨恨/Rancor》
4 《幽体の飛行/Spectral Flight》
4 《ひるまぬ勇気/Unflinching Courage》
3 《シミックの魔除け/Simic Charm》
sideboard

4 《復活の声/Voice of Resurgence》
3 《濃霧/Fog》
2 《繕いの接触/Mending Touch》
3 《否認/Negate》
3 《天啓の光/Ray of Revelation》


M14からは《林間隠れの斥候》《鬼斬の聖騎士》が採用されています。
前者は最軽量の呪禁クリーチャーであり、このアーキタイプの速度を一段階押し上げるクリーチャーです。高速化によって中速以降のコントロールによる全体除去というこのデッキの弱点を克服することに成功しています。後者は赤と黒に対してはほぼ呪禁であり、オーラの弱点となる多くの単体除去を回避することが可能です。また、初めから絆魂を持つことで、《炎樹族の使者》デッキなどのビートダウンに優位に戦うことができます。先制攻撃が《怨恨》と相性が良い点も特筆すべき点としてあげておきます。

■まとめ
今回のSCGでは新たにライフゲインによるシナジーを得た《スラーグ牙》デッキ、新たなトークンエンジンを得た《カルテルの貴種》デッキが優れた成績を残しました。
ある程度傾向が定まった現環境では、一本気な《炎樹族の使者》や《トラフトの霊》よりもオールマイティに対応できる《カルテルの貴種》《スラーグ牙》デッキが環境を定義付けていきそうです。一方今回あまり得るものがなかったように見える《スフィンクスの啓示》デッキですが、今後対策すべきカードが規定されていくことで、再び力を取り戻すことが出来るのか注目です。

コメント

サンダー
2013年7月23日8:00

考察記事がすごく分かり易かったです

リンクしましたm(_ _)m

nophoto
ターパン
2013年7月23日11:48

とても読みやすく分かりやすい文章で、マジックへの興味が湧く良記事ですね!!

リミテッド専門ですが、観戦対象としてもマジックは優れていると再認識させられました。

ツイッターで紹介させて頂きましたm(_ _)m

シルク
シルク
2013年7月23日13:28

分かりやすくてためになる考察記事ですわ

啓示コンは今後の他デッキの動向に、どう合わせられるかが焦点ですよねー

みみみ
2013年7月24日0:45

>サンダーさん
お褒めいただきありがとうございます!
自分の中での整理のためのメモ書きのようなものですが、何かの参考になれば幸いです。

>ターパンさん
ありがとうございます!
Twitterで宣伝までしていただけるほど気に入っていただけて恐縮しております。今後出来たらリミテッドの考察などもしてみたいですね。

>シルクさん
ありがとうございます!
わかりやすくを心がけているつもりですのでそう言っていただけるのは大変嬉しいことです。
啓示を中心としたコントロールは個人的には好きなので、これからの巻き直しに期待しています。

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